こんにちは。
小学校の3年生か4年生のとき,このようなことがありました。
このときの先生ははっきりと覚えています。3年生,4年生のときの担任の先生だったので,この2年間の出来事というのは間違いありません。
社会で農業について学んでいました。
学校の教科書の欄外の年表か何かに「パイロットファーム」という「ことば」が載っていました。これは何なのだろうかと思い,授業中に「先生,パイロットファームって何ですか?」と質問をします。
そのときのことが何とも切ない思い出として今も記憶の隅に残っています。
根釧台地で酪農が盛んになるまでには多くの苦労があったそうです。
近くに釧路湿原があることでもわかるように,この地域には湿地帯が広がり,さらには千島海流の影響を受けて夏でも気温が上がらないことから農業には適さず,稲作はもちろん畑作もできない場所でした。
そうした場所でも雑草は生えるものです。牧草なら育つだろうと酪農をこの地域に根付かせる取り組みがはじまりました。
ところが,牛は草なら何でも食べるだろうと安易に考えていたものの,雑草は食べてくれず,牧草もうまく育たなかったそうです。
そうした状況の中で1950年代に設置されたのがパイロットファームです。
実験農場,試験農場のことで,この地域で酪農ができるようにさまざまな研究に取り組みました。
こうして徐々に根釧台地で酪農が育っていったのです。
小学生の私は,その授業で根釧台地の酪農について学んでいたところでした。
そして,あの質問をします。
先生は質問に答えずに,こうおっしゃいました。
「図書室に行って調べてきなさい」
わけがわからずぽかーんとしていると,
「いいから今から行ってきなさい」と二の矢が来ます。
「授業を抜けていいんですか」
「いいから行ってきなさい」
と,こんなやり取りがありました。
図書室に行ってまずは大きな百科事典を引きましたが載っていませんでした。
農業に関する本をいくつも探してみましたが,答は見つかりません。
ある本に「パイロットファーム(試験農場)」という記述があるのは見つけましたが,もっと詳しい答が知りたかったので,さらに探しました。
結局,答が見つけられないまま教室に戻ってその旨を伝えると,先生からものすごく白い目で見られたことを覚えています。
今考えると,先生は質問に答えられなかったのでしょう。
ご自分に自信がなく,「わからない」と正直に言うこともできなかったのでしょう。
しかし,ご自分の実力不足,勉強不足の責任を子どもたちに転嫁してはいけません。
図書室にいたときの私は,疎外感もありましたし,授業を抜けた罪悪感もありましたし,他の先生に見つかったら叱られるだろうとおびえてもいました。
このときに悲しさ心細さは今でも鮮明に覚えています。
教える立場としては,万全の授業準備と日々の学習を怠らず,自信をもって振舞えるようにすべきでしょう。ごまかそうとすると,おかしなことになってしまう場合がありますね。
では。