こんにちは。
いくつか学力テストの実施を後倒した中学校があるようで,すぐに書きませんでしたが,たぶんもう書いても差し支えないでしょう。
もしも,まだ受けていない中学生の方がこれをご覧になっていたら,つづきは読まないでください。
学力テストB社会に,次の問いがありました。
「人物Dについてのカード」
二度目の護憲運動が起こると,護憲派の政党の連立によって内閣総理大臣になった。この内閣の下で,普通選挙法が成立し,治安維持法が制定された。
問 下線部②(引用者注:普通選挙法)の成立で,衆議院議員選挙の有権者数がそれまでの約4倍に増加しました。増加した理由を書きなさい。
1925年の選挙権「25歳以上のすべての男子」というのは頻出問題ですし,こんなのふつうの問いだとお感じなる方がほとんどだと思います。
ここで,札幌市で採択されている教科書『社会科 中学生の歴史』(帝国書院)を見てみます。引用する記述は,現中3生が使用している改訂前のものです。
「翌24年(引用者注:1924年),2度目の護憲運動が起こり,普通選挙を求める声も高まりました。(中略)この加藤高明内閣の下で,1925年,25歳以上のすべての男子に衆議院議員の選挙権を与える男子普通選挙が実現しました。」
引用箇所ではないところにも,欄外なども含め,帝国書院の教科書には,「普通選挙法」という用語が載っていません。
正確には,1925年に衆議院議員選挙法を改正したのであり,「普通選挙法」というのは通称であるため,帝国書院の教科書では使用していないものと考えられます。
(北海道の他の自治体で採択されている他の歴史教科書には載っています。)
ちなみに,今年の1年生が使用している改訂版には,「いわゆる普通選挙法」と,帝国書院の教科書にも書いてあります。「いわゆる」と付して,用語が正確ではないことを示しています。
この影響で解答できなかった生徒さんはごく少数だとは思いますが,問題の不備であることには違いありません。
たぶん,作問者の方はきちんと教科書の記述を確認していないと思われますし,複数の人でチェックもしていない,もしくは機能していないのだと感じます。
かなりいい加減なテストであるという側面は,認識しておくべきでしょう。しかし,復習はしっかりしてくださいね。
余談ですが,これを読んだことを隠して
「先生,学テBの復習をしたんですが,普通選挙法って教科書に載ってないんですけど?」などと,社会の先生に質問に行くと,やる気があるなあとアピールできて内申点が上がるかもしれません。
では。