志学ゼミナール塾長のブログ

札幌市,中島公園近くの学習塾「志学ゼミナール」のブログです。

礼儀作法

こんにちは。

先週の日曜日に将棋のイベントに参加したことを書きましたが,実は,そのイベントで,高校時代に交流のあった方と再会いたしました。
高校時代は将棋部だったのですが,高校の将棋の大会に出るたびに顔を合わせていた他校の方です。当時,彼はすでに初段で,高校時代は強くなかった私が敵う相手ではなかったのですが,同学年ということもあって,大会で会うとお話しするようになりました。

高校の将棋部のことでいうと,別の高校の1つ下に,当時から強豪として知られていた子がいたのですが,彼とは東京に住んでいたときに,将棋を教えてもらったり,そのあと飲みに行ったりと,懇意にさせていただきました。Aくんという方で,彼はアマチュアの大会でプロになる前の瀬川昌司先生にも勝ったことがあります。瀬川先生はサラリーマンからプロ棋士になった方で,そのエピソードが『泣き虫しょったんの奇跡』という映画になったことでも知られています。Aくんとも高校時代に1度だけ大会で当たったことがありますが,一瞬にして粉砕されたのでした。

将棋を通じてたくさんの出会いがあって,また,再会することもあって,そうした1つ1つの出会いやそれをもたらしてくれた将棋に感謝しています。

高校時代にはこんなこともありました。
ある大会でのことです。
持ち時間がそれぞれあり,使い切ると秒読みになります。節約できるところでは時間を節約して指さなければなりません。ただ,将棋には礼儀作法を重んじる面もありますので,私などは,一手一手をなるべく丁寧な動作で指すようにしています。きれいに駒を持って,パチっと指して,そしてチェスクロックという持ち時間を計る時計のボタンを押します。

その大会で当たった相手は,ものすごく急いで指していました。歩は前に1マスしか進めませんので,歩を動かすときなどは,指でちょこんと前に押すだけで,そしてかなり急いでチェスクロックのボタンを押します。その急ぐ様があまりにもひどい。
私が歩をつまむと,まだ私がその駒を前に進めて盤に置いていないのに,彼はちょこんと自分の歩を動かすような有様です。完全にこれは反則です。相手が指す前に,自分の駒を動かしているわけですからルール上は「二手指し」という2回連続で着手する反則なわけですね。

相手のほうが学年が上でしたし,文句をいうのもつまらないですし,我慢して指したわけです。それで,わざとゆっくり指したりもして,それでも勝てば問題がないわけですから,しっかりと考えてもいました。
私のほうが優勢だったのが,時間がなくなって私だけが秒読みになり,それで間違えてしまって逆転されました。それ以降も,「時間攻め」というやつで,相手は私が指すと間髪入れずに次の手を指します。

そんなときに事件が起こりました。
私が遠くから角を打って王手したところ,相手はまたほとんど考えずに次の手を急いで指します。ところが,王手に気が付かずに別の手を指そうとしたのです。黙っていれば私の反則勝ちですが,とっさに私が「王手です」と教えると,気まずそうに指そうとした駒を戻して,別の手を指して王手を防いだのでした。
礼儀作法のきちんとした方であれば,そのまま投了(将棋で自分の負けを宣言すること)したと思います。
結局,その将棋は私が負けました。

ずっと将棋をつづけている私ですが,そのときの相手はそれ以来会うことがありませんでした。彼が将棋をつづけていたなら,どこかで会う可能性が高いと思うのです。きっと,高校を卒業して将棋も卒業されたのでしょう。

将棋はゲームという一面が強いですが,単純な勝ち負け以外にも大切なことはたくさんあります。今回のことでいうと「礼儀作法」ですね。こうしたことについても尊重できるようでないと,結局は芸事というのはながつづきしないのかなと思っています。
高校時代に将棋で知り合った2人も礼儀正しく,「できた人間」です。
勉強にも芸事と共通するような側面があり,偏差値だけ上げればよい,勉強だけできれば他のことはどうでもよい,という姿勢では勉強で一流になることもかなわないように思うのです。

では。