志学ゼミナール塾長のブログ

札幌市,中島公園近くの学習塾「志学ゼミナール」のブログです。

ざる

こんにちは。

ある本(教育とは無関係のものです)を読んでいて,「ざるで水をすくう」という表現が出てきました。
さすがに,「ざる」までとはいかなくて,苦手な子,物覚えの悪い子に勉強を教えるのは「ざるで水をすくう」ような要素があるなあと感じました。

教えても,なかなか理解してもらえない。
何度も何度も繰り返し教える。
やっとわかったかなあ,解けるようになったなあ,と思っても,数日後にはきれいに忘れていたり,解けなくなっていたりする。

こうした経験は,教育に携わる方であれば珍しくないことだとわかっていただけると思います。
さらに,最後の部分,せっかく教えたのきれいさっぱり忘れていたとき,こちらが受ける徒労感ときたら,正直に申し上げて,やるせない気持ちになり,やる気を失いかけます。
ただ,根気よく何度も何度もこの過程をくり返していると,だんだんとできること,忘れずに覚えていることが増えてきて,それなりにはできるようになります。

この「徒労感」を感じたとき,怒って感情的になる先生も少なくないでしょうし,中にはあきらめるような方もいらっしゃるでしょう。原因を子どもにのみ求め,責めるようなことをするのが一番いけないですね。
なぜなら,簡単に想像できると思いますが,教えているこちら以上に,生徒たちが受ける失望や挫折感のほうがずっと大きいでしょうし,投げ出したい気持ちもあるはずですから。
そういうときこそ,励ましてあげる,子どもの気持ちに寄り添ってあげることが大人たちの役目ですね。
気持ちを切り替えて,「がんばって,もう一回やってみようぜ」と,笑顔で語りかけ,決して怒るようなことはしない,それが私の指導方針ですし,子どもたちにとっても一番よいことだと思っています。

「ざるで水をすくう」と形容しましたが,同じざるで水をすくいつづけるより,いろいろなざるを使ったほうが,もしかしたら引っかかるものが多くなるかもしれませんね。

たまに,うちの子は勉強が苦手だから,学生の先生やあまり勉強が得意でない先生(学歴という意味で,高くない先生)に教わったほうがいいと思っています,と伺うことがあります。
このざるのたとえで考えてみます。経験の長い先生,学力の高い先生のほうが,教えるときにいろいろな引き出し,いろいろな理解の方法を知っている傾向が強いでしょう。1つの事柄にたいしても,さまざまな角度から深く理解していることがその理由の1つです。つまり,たくさんの種類のざるをもっていることになります。
対して,学生の先生などでは,自分は苦手だけれどこうやって理解したと,1つのざるしかもっていないような場合が多いように感じます。
学力の高い先生はたくさんのざるをもっているのですが,いろいろなざるで何度も水をすくうように教える,というよりも,ざるを何枚にも重ねて水をすくうようなイメージが近いかと思います。
具体的にいうと,生徒がもっとも理解しやすい説明の仕方を選べる,1つの説明がダメだったとしても,違う方法や切り口でもう一度教えることができる,その中のどれか1つの方法だけでも生徒は理解できるかもしれない,となると思います。学習効果はこちらのほうが高そうですね。

物覚えの悪いことを形容して「ざる頭」などということもあります。
ただ,長い間継続して努力をつづけていると,勉強の効率,暗記の効率が上がってくるものです。ざる頭も,だんだんとざるの目が細かくなっていって,最後には目がないくらいまでになるということです。
怒らずに励ましながら根気よくつづけることが大切ではないしょうか。

では。