志学ゼミナール塾長のブログ

札幌市,中島公園近くの学習塾「志学ゼミナール」のブログです。

力のつりあいと作用・反作用

こんにちは。

 

たまには具体的な教科の内容について書きたいと思います。理科の力学の話です。

 

今年の神奈川県の入試問題に,次のものがありました。

この問いは,かなりの正答率の低さが予想されます。

「力のつりあい」とは何か,

「作用・反作用」とは何か,

そして両者の違いは何か,しっかりと理解していないと正答にたどり着けないでしょう。

 

たまにこんな誤解を聞くことがあります。

「作用と反作用はつりあっている」

 

大きな間違いですし,力学の基本ですので,こんなことをおっしゃる先生がいらしたとしたら,信用してはいけません。

 

まず,「力のつりあい」について確認します。(2つの力の場合のみ考えます。)

① 力の大きさが等しい2力が,

② 同一直線上にあって,

③ 力の向きは反対である。

というように教科書に書いてあると思いますが,

前提として「④ 1つの物体に2つの力がはたらいているとき」でなければなりません。この④を,中学生たちは見落としがちです。

1つの物体に①~③の状態の2力が働くので,物体は静止することになります。

 

次に「作用・反作用」について確認します。

2つの物体間で対になってはたらく力が作用と反作用です。

具体的に書くと

「押す」側と「押される」側,

「引く」側と「引かれる」側があり,

① 一直線上で

② 同じ大きさの

③ 力の向きが反対の

力がそれぞれにはたらきます。

 

つまり,2つの物体を考えているのが「作用・反作用」です。

人(物体1)が壁(物体2)を押すと人も壁に押し返される,というように,1つの物体に2力がはたらいていませんので,「力のつりあい」とは異なります。

くどいようですが,「1つの物体に2力がはたらくとき」にしか,力はつりあいません。

 

問いに戻ってみましょう。

「6」の誤答が多いような気がします。

図で「③と④の合力」と「⑤の力」が,同一直線上で向きが反対の等しい大きさの力です。

しかし,これはどちらも磁石Aにはたらいています。

同じ物体に2力がはたらいているわけで,これは力のつりあいです。

仮に,「磁石Aが台を押す力」が図示されていれば,「⑤の力」とは作用・反作用の関係になります。

 

では,作用・反作用はどれか考えてみましょう。別々の物体にはたらいている大きさが等しく向きが反対の2力を探す必要があります。

すると,「①の力」と「④の力」がその関係であることに気がつきます。

それぞれに磁石がしりぞけあう力がはたらいています。

したがって,正解は「3」です。

 

中学理科だと,重力との作用・反作用は出てこないと考えてください。

問題の図で,たとえば「②の力」は重力ですが,「①の力」の磁力と「つりあう」ものの,作用・反作用ではありません。

地球が物体を引っ張るのが重力で,そのとき物体も地球も引っ張っていることになるのですが,こんなものは問われないでしょう。

 

よくわからなかった中学生の方は,先生に質問してみましょう。

また,物理は専門ではありませんので,もしも間違いがありましたらご指摘いただけると幸いです。

 

では。がんばってください。