こんにちは。
昨日の忘れ物のお話のつづきです。かつて働いていた学習塾でのことです。
講習の初日の社会の授業では,多くの子どもたちが地図帳を忘れてきました。一応,講習のテキストには「地図帳を持ってくること」と書かれていたのですが,そこまで目を通す生徒は少なく,また,講習前の本科の授業の最後で,講習では地図帳を持ってくるようにアナウンスするのですが,講習だけ社会を取る生徒もおり,なかなかみんなが持ってくるのは難しい事情がありました。
教室には,2冊ほどの貸出用の地図帳が置いてありましたが,2冊で足りるはずもなく,地図帳がないまま授業を受ける子がたくさんいました。
あるときの講習初日のことです。社会の授業の前になって,多くの子どもたちが貸出用の地図帳を借りにきました。先着2名は借りられたものの,借りられなかった子どもたちがたくさんいました。
この学年の授業は担当していないけれど,教室のちょっとエラそうな社会科担当の先生(私のこと)がいることを生徒たちは知っていたことでしょう。当然,私は個人の持ち物として地図帳を持っています。
さて,地図帳がなくて困っている生徒がたくさんいる中,ある女の子が話したこともない私のところにやってきて,見事に私から地図帳を借りていったのでした。
機転も利きますし,またエラそうな人にもしっかりと話しかけることができる賢い子です。
その後,私は別の授業を行い,席に戻ってくると,机の上に貸した地図帳が置いてありました。少し大きめの付箋が表紙に貼られていて,簡単なお礼のメッセージとお名前が書いてありました。
「ありがとうございます」だけで済ませず,記憶は定かではないですが,他にも楽しく勉強できましたとか,これからもよろしくお願いしますとか,そんな言葉も添えられていたと思います。
気遣いもすばらしいですね。
次年度,中3になったこの生徒の授業を担当することになるのですが,希望した大学付属の私立高校へと進学なさいました。きっと,皆から愛され,良い人間関係に恵まれて,順風満帆な人生を送られていることでしょう。
結局,忘れたときにどうするか,そちらのほうが重要なのではないでしょうかね。
では。