志学ゼミナール塾長のブログ

札幌市,中島公園近くの学習塾「志学ゼミナール」のブログです。

バランスよく学ぶ

こんにちは。

入試制度が変革期を迎えていて,AL,アクティブ・ラーニングがもてはやされていますね。
もちろん,アクティブ・ラーニングにも長所はたくさんあります。
生徒の興味を引き出すことが可能かもしれませんし,自分で考えて表現するという学習は,さまざまな訓練にもなります。
ただ,これが万能であって,これだけですべてうまくいくと考えるのは,違っているように思います。
いろいろな意見があるでしょうし,実際にすべてアクティブ・ラーニングで授業されている先生方,アクティブ・ラーニングを研究する教育の専門家の方もいらっしゃいますので,あくまで私個人の考えとしてお読みください。

1つの問題点として,従来型の講義と演習中心の授業と比較した場合に,もしかしたら基礎学力の向上は,アクティブ・ラーニングのほうが劣っているかもしれない,というのがあります。
イメージしやすいように,数学の授業風景を描いてみます。少々極端かもしれませんがイメージは伝わると思います。
ある問題について,解き方を先生が解説して教え,類題を生徒たちが解き,それを答え合わせして,さらにまた類題を解き,…となるのが従来型の授業でしょう。
対してアクティブ・ラーニングでは,ある問題が示され,さあ,みんなで話し合いながら考えてみよう,となります。そうして,ああだこうだと話し合い,班ごとに問題の解き方がまとまった時点で,それぞれの班が発表して終わりとなります。
演習量が不足して,基礎学力が身につかない懸念があるわけです。
もちろん,宿題として演習問題が課されたりはするのでしょうが,授業と宿題の演習がうまくマッチして機能するかどうかはまた別問題でしょう。

別の問題点として,話し合いに参加したり,自分の意見を積極的に発表したりと,自分を表現するのが苦手な子や,教わったことをコツコツ練習してできるようになるようなタイプの子には,このアクティブ・ラーニングは向いていないように思います。せっかく,勉強の才能があっても,形式が自分に合わないために,教室の中で埋もれてしまうことがあるでしょう。授業中はほとんど目立たないのに,いざテストを解かせてみるとすごくよくできる子がいます。そういう子たちの才能を,果たしてアクティブ・ラーニングは伸ばすことができるのかどうか。

もちろん,従来型の講義中心の授業にも長所と短所があり,万能ではないわけです。

大切なのはバランスだと思います。
それぞれをどのような割合で組み合わせるかによって,新制度入試にも対応した高い学力の養成ができるように思います。
この割合は,教科や同じ教科でも扱う単元によって異なるでしょうし,生徒の学力や性格によっても異なってくるように思います。

ある学校が,2015年に学校名を改称して,大幅な学校改革も行い,また女子校だったのを共学化して,つまりはまったく新しい学校としてスタートしました。
校長先生のプレゼンテーションが素晴らしく,ものすごい学校になるのではないかと期待させるようなところがありました。この学校ですが,授業はすべてアクティブ・ラーニングで行いますと,それを売りにしていました。
新しくスタートしたことと,全部アクティブ・ラーニングで果たしてうまくいくのだろうかと,ずっと注目をしていたのですが,2019年にはじめて卒業生を出しました。2015年に高校に入学した生徒たちで,かなり高い内申点と学力がないと入れないような入試でした。(最難関ではないものの,上位進学校レベルでした。)
果たして,最初の卒業生の大学入試の結果は…
東大・京大・一橋・東工大0名,旧帝大0名,それに準じる国立大に2名と早慶に3名が合格と,同レベルの高校と比較したときに,かなり残念な結果だった言わざるを得ないでしょう。

しかし,この学校の真価が問われるのは,中1から入学した子たちが卒業する3年後でしょう。
来年度は結果を出す可能性もありますし,まだまだ失敗と決めつけるのは早計ですね。今後も注目したいと思っております。

都内のある国立大学の附属中学では,授業は調べ学習やレポート中心で,アクティブ・ラーニングに近い学習方法であると思います。たとえば地理でヨーロッパを勉強するとき,生徒ごとに,あなたはイギリス,あなたはドイツ,あなたはフランス,…と担当を決めて調べ学習をして,最後にそれぞれがレポートをまとめて発表します。
担当した部分についてはものすごく詳しくなるものの,体系的に知識を学べないというデメリットがあります。
この学校の子たちは,都立の推薦入試であるとか,普通の入試問題でも思考力を使うものであるとか,そういうものにはものすごく強い生徒が多かったです。思考力・表現力の鍛錬が違うということでしょう。ただ,体系的に学ぶために,みなさん学習塾にお通いでした。
そうやってバランスよく学ぶわけですね。人間としても優れた生徒が多く,将来はさまざまな分野で活躍してくださるだろうなとも思っています。バランスよく学んだ効用ですね。

今日の記事ですが,ある学校のことを念頭に置いて書いています。
ここもアクティブ・ラーニングのみで授業を行っている学校ですが,まだ卒業生は出ていません。
学校に任せていては大学受験はままならない,だから,学校は学校と割り切って外部の機関で大学受験対策をする,そういう方向に流れていくのだろうなあと感じています。ただ,膨大な勉強量が必要となり,ものすごく大変にはなるでしょうね。それをこなせば大きく成長できることもまた事実ですが。

では。