こんにちは。
藤井総太先生の活躍により,メディアで将棋が取り上げられることが格段に増えました。今日も藤井先生は大きな勝負を戦っています。またニュースになるかもしれません。
将棋がワイドショーなどで取り上げられるとき,解説者としてプロ棋士の先生方が出演されることも多いです。
知名度も高くて人気者なのが加藤一二三九段でしょうか。「ひふみん」という愛称のほうがピンとくる方は多いかもしれません。名人をはじめとしてさまざまなタイトルを獲得された昭和の大棋士です。
記事のタイトルの豊川孝弘七段もよくテレビにご出演されています。
ダジャレを言うおじさん,という印象の方が多いかもしれません。
この方は,テレビでの印象とは違って,ものすごい人格者です。努力と苦労を重ねて「B級1組」という上から2番目のクラスまで上がったこともあります。ダジャレの印象とは裏腹です。
かつて「トリビアの泉」というテレビ番組がありました。
その番組で「テレビの将棋の対局で,二歩という初歩的な反則で負けたプロ棋士がいる。」というトリビアが紹介されたとき,取材に応じてご出演されたのも豊川先生でした。実は,放送の時点で,ほかにもう一人,二歩で負けたプロ棋士がいました。その方は取材を断ったのかもしれません。
豊川先生のお気持ちを邪推すれば,将棋がメディアに取り上げられる貴重な機会ですので,恥を忍んでご出演されたのではなかろうかと思うのです。
以前に私が将棋連盟の道場でアルバイトをしていた頃,たまに目の不自由な方が将棋を指しにいらしていました。
マス目を手で触ってわかるような特別な盤を使い,駒の位置を手で確認しながら,そしてたまに「ここの駒は何ですか」,「持ち駒は何がありますか」などと相手に聞いて確認しながら指されていました。
いつも平日のお客さんの少ないときにいらっしゃるため,対戦相手がなかなかいないことも多く,私も何局か教えていただいたことがあります。指していて,やはり違和感があります。こちらが指す度に「7七角です」などと符号で指し手を伝える必要もあります。そいうわけで,その方との対局を嫌がる方もいらして,対戦相手が見つからないことも少なくありませんでした。
ある日のこと,その日も目の不自由な方がいらしていたのですが,例によって相手がいなくて困っていました。
ふと気がつくと,どなたかがその方と将棋を指されていました。見ると,豊川先生でした。完全にボランティアで相手をしてくださったのでした。ファン一人ひとりを大切にされる先生の真摯な姿勢を感じました。
豊川先生はものすごく大きな視点で我々とは別の世界を見ているのかもしれません。
今も先生のことは尊敬をしています。
では。