志学ゼミナール塾長のブログ

札幌市,中島公園近くの学習塾「志学ゼミナール」のブログです。

森下卓九段

こんにちは。

20代のころですが,奨励会という将棋のプロ棋士の育成機関に在籍するある青年に将棋を1局教わったことがあります。プロ棋士の卵ですから,県代表レベルの強さです。高校生の彼のほうが私よりもはるかに強いので,年下の彼に教わったのです。

将棋の対局が始まるとき,互いに「お願いします」とあいさつをするのですが,彼は本当に深々と心を込めてあいさつされていました。自分よりもはるかに弱い対局相手に最上級の敬意を表されています。
本当に立派なものだと感心したものです。まだ,高校生で,ここまで礼儀正しいのです。
私はというと,あいさつを終えて頭を上げたときに,まだ彼が深々とお辞儀している姿に気がつき,気まずくなってまた頭を下げ,相手のようすをうかがって,相手に合わせるように再び頭を上げたのでした。未熟な自分が恥ずかしくなりました。

その数年後,飯田橋で彼の師匠である森下卓九段をたまたま見かけたことがあります。
ものすごく暑い日でしたが,スーツをビシッと着て,背筋をピンと伸ばして歩く姿は,遠目からでも凛々しく感じ,また一目で森下先生だとわかりました。
ちなみに,森下先生は,どなたからか「将棋に仕える修行僧」と形容されたこともある非常に礼儀正しい方です。将棋の勉強の邪魔になると,テレビを捨てた逸話が有名です。
私はプロ棋士の中でも,森下卓先生と鈴木大介先生のお二方をとくに尊敬しております。
そこで,ご本人に出会えた感激から,森下先生に声をかけてみました。
「先生の矢倉の本で勉強しました。これからもがんばってください!」と,やや緊張し,興奮した状態でした。
すると,森下先生は,直立不動になり,ものすごくよく通る声で,
「ファンの皆様の声援は本当に励みになります。ありがとうございます。」と言葉を返してくださり,90度に深々と,そして本当に心を込めて長い時間お辞儀をされていました。こちらが気まずくなるくらいにご丁寧な対応でした。

お師匠さんもお弟子さんも本当に立派な方だと思います。
あいさつする意味は何なのだろうかと,考えさせられるような話でもあると思います。
形だけお辞儀するのではなく,気持ちがこもっていることが相手にも伝わります。気持ちが伝わるのは人間ができているからでしょう。あいさつ1つをとっても,その方の人格がわかるわけですね。

では。