志学ゼミナール塾長のブログ

札幌市,中島公園近くの学習塾「志学ゼミナール」のブログです。

プロ棋士の本気

こんにちは。

 

昨日の記事のつづきです。

松本くんと将棋を指したのは,このときだったと思います。ブログに記事が残っていました。2月ということは,3年生ではなくて,まだ小学2年生だったということでしょう。やはり天才少年ですね。

 

「ずるい」

https://shigakuseminar.hatenablog.jp/entry/68998355

 

東京では,比較的簡単にプロ棋士の指導を受けられました。また,プロの先生方とお酒を飲みに行く機会も少なくなかったです。

このように関東の子たちが「ずるい」環境の中で将棋を勉強できるのに対して,松本くんは地方のハンディを背負っているわけですが,ぜひがんばってほしいものです。

また,現在「法隆寺展」が行われています。こうした貴重な機会を,地方の私たちは生かしていくべきなのだろうと,改めて思いました。

 

ここからは,東京での将棋の思い出です。将棋のわからない方にはつまらないかもしれません。申し訳ありません。

10年程前まで,新宿に「あり」というスナックがありました。将棋関係者が多く集まる場所として知られており,プロ棋士もたくさん訪れていました。店内には将棋の盤駒が置いてあり,飲みながら将棋を指すことができました。

友人とへぼ将棋を指していると,プロ棋士の先生が笑いながら覗いているなどということもしばしばでした。もちろん,プロの先生が素人をばかにしたり,将棋に口をはさんだりするようなことはありません。

 

しかし,一度だけ見ていたプロの先生にもてあそばれたことがあります。

そのとき私たちが指していた将棋が,プロ棋士の感覚からすると,おそらくものすごく異様な局面だったのでしょう。

私の将棋を見ていたあるプロ棋士が,「あれ,それ,端の突きあいがあるからダメな形じゃないの。」と,つぶやかれました。ただ右端の歩を互いに突いているだけで,プロ同士では絶対に出現しない「奇妙」な盤面になっていたのでしょう。

 

友人の四間飛車に対して,私が4五歩早仕掛けという作戦で戦っていたときのことでした。中盤の入口なのですが,プロ同士ではすでに私の必敗だというのです。

 

実は私もそのことは知っていました。しかし,プロが指すような高度な定跡通りに進むはずはなく,アマチュア同士ならどうやってもいい勝負のはずです。

調子に乗って私も「あっ,千葉-渡辺のC1の順位戦ですよね。」などと,その定跡がはじめて指された将棋のことを口にしました。

 

度々一緒に飲んでいた,仲良くさせていただいていた別のプロ棋士Aさん(のちにA級というトップ10人のクラスまで上がります)が,「にしさん。それを知っていて指すということは,対策があるんですね」と,むちゃぶりをしてきます。もちろん,対策などありません。

 

その後,もちろん将棋は定跡通りには進まず,私の必勝になりました。Aさんも,はじめにつぶやいた別のプロの先生も,私が勝つことは面白くなかったでしょう。

友人はこれは困ったなと,あきらめかけていましたし,私も「そうですね。もう必勝でしょう。」と,酔いも手伝って口を滑らせました。

すると,間髪入れずにAさんが「にしさん,本当ですね。必勝なんですね。ちょっと代わってください。」と,友人の代わりに指し始めたのです。のちのA級棋士が相手ですが,局面は投了してもおかしくないほどの大差です。さすがに勝ち切れると思っていました。

 

どうなったかというと,次々と妖しい手が繰り出され,みるみるうちに局面は複雑になり,気が付いたら悪くなっていて,あっという間に負かされたのでした。

プロ棋士が本気を出すと,凄まじい強さです。しかし,貴重な経験をさせていただいたものです。

 

また,専門家の前で,素人が知識を自慢するような真似は絶対にしてはいけないということでしょう。

 

では。