志学ゼミナール塾長のブログ

札幌市,中島公園近くの学習塾「志学ゼミナール」のブログです。

将棋の教育ママ

こんにちは。

 

20年近く前のことです。将棋道場でこんな光景を目にしました。

ある小学生の男の子が将棋に負けてしまいます。

すると,お母さんが駆け寄ってきて,「ダメじゃないのこんなことじゃ。相手の方にもどこがいけなかったのかきちんと聞いてみなさい」と声をかけています。

それを聞いた男の子は,本当に悲しそうな眼をしていました。

 

プロになるような(のちにプロになった)子どもたちをそれなりの数は見てきました。みなさん,信じられないような速さで上達し,あっという間に初段まで駆け上がります。

対してこの子は,級が上がるのも特別に速いわけではなくて少しずつです。将棋を指していても楽しそうではありません。端的に,あまり将棋が強くはない私の目から見ても,才能があるとはお世辞にも言えないような状態でした。

しかし,なぜかかなりの情熱をもって,お母さまがお子さまをプロ棋士にしたいようでした。

 

どうせすぐにやめるだろうなと思っていたのですが,のちにこの子が奨励会というプロ棋士の育成機関に入ったことを知ります。このときは本当に驚きました。知人に聞いたところでは,お母さまがプロ棋士の個人レッスンなどにも通わせたそうです。

奨励会では6級(6級でも県代表に近いくらいのレベルです。)からはじまります。四段なるとプロですが,道のりは大変に険しく,プロになれるのは10%強だと言われています。さらに三段になってからが大変で,三段になるまでがプロ棋士への道程のうちの半分だとも言われています。

 

周囲の期待,とくに絶大な母の願いを背負い,懸命に努力されたのでしょう。ゆっくりゆっくりと上がっていき,二段までになりました。

しかし,限界もあったのでしょう。結局は26歳の年齢制限で三段になれぬまま奨励会を去って行きました。

 

強制されても,どんどんお金だけかけても,ご本人が楽しく主体的に行わないと,大成はできないのでしょうね。

将棋の話ですので,お母さまを愚かに思われる方も少なくないかもしれません。

しかし,勉強に置き換えてみると,こんな話は陳腐なほどたくさん転がっています。

親御さんのお気持ちは痛いほどよくわかりますが,ご本人がやりたいと思うまで,信じて見守るしかないのでしょう。そうすれば,いずれは必ず芽が出るものです。

 

では。