こんにちは。
ある学校の入試問題で,井上靖の『あすなろ物語』が取り上げられていました。
小説の最初の部分で,主人公の鮎太少年が,一緒に住んでいる親戚の冴子というお嬢さんから,手紙を届けるように頼まれる場面です。
なんということもないごく普通の入試問題で,ただ書かれたのが古いので,子どもたちには読みにくい文章だろうなと,そんなことを考えながら解いていたのですが,ふと,物語のつづきが読みたくなりました。
当然ですが,入試問題で取り上げられているのは小説のごく一部です。話の筋について,あまり多くのことはわかりません。
冴子はきっと美しい女性なのだろうな,手紙を渡した相手との関係も気になるなあ,鮎太と冴子もなんだかおかしな関係だなと,話の全体を知りたい気持ちもありましたし,この後の展開に期待する気持ちも大きかったです。
一昨日の日曜日,買い物に出かけたのですが,本屋さんで『あすなろ物語』も買ってきました。銀座ライオンさんでビールを飲みながら読もうと思ったのですが,お店が満員で入れなかったことだけが誤算でしょうか。
期待した通り,冴子は美しい女性でしたし,人間関係についての疑問も解決しました。
そして,話の筋がとても美しいのです。詩的な表現も多く,文章自体もすてきですし,ガラス細工のような小説だと感じました。読んだのは,まだ最初の章だけですが,心が洗われるように感じました。
主人公の鮎太が予感していた通りの結末を迎えるのですが,読んでいるこちらも鮎太とともにその予感が膨らんでいき,最後はその通りの幻想的な結末となります。
念のためにお断りいたしますが,読む人によっては,悲しい結末だと感じるかもしれません。
しかし,本当に美しい作品であることは間違いないでしょう。読んでみて本当によかったです。
授業中に何らかの作品が紹介されたり,課題文の小説が面白そうだったりと,そうした機会は少なくないでしょう。実際に本を手に取ってみる生徒さんもいらっしゃり,成績が伸びていく傾向もあります。
国語に限らず,授業中に気になったことを後で調べてみるか,そのままにしてしまうか,そうした積み重ねが子どもたちを伸ばしていくのでしょう。
では。