志学ゼミナール塾長のブログ

札幌市,中島公園近くの学習塾「志学ゼミナール」のブログです。

疑義問題

こんにちは。

昨日の過去問の話のつづきです。
過去問集に間違いがあると書きましたが,そもそも難関校の入試では疑義問題が少なくありません。
作問のミスといえばミスなのですが,答えが特定できないようなものがあります。

念のために申し上げますが,過去問集が間違えていたり疑義問題があったりするのは,都内では,
筑波大附属駒場,筑波大附属,東京学芸大附属,お茶の水女子大附属,開成といった最難関校です。
問題が難しいのに加えて解答を公表していないからです。

国立の附属高校に何人も合格者を出す塾におりましたが,これらの学校の入試問題では,答えがどれかわからず,その塾で教えていた優秀な先生方の間でも,解答がわれることがありました。
国語や社会なんかで選択肢のどれが正しいのかわからない,ということが希にありました。

1つの例をあげます。
2016年 筑波大附属高校の社会です。

問 社会保障制度の現状について述べた文ア~エの中から,適切なものを1つ選び,記号で答えなさい。
 ア 社会保障給付費の大半は公的扶助(生活保護)にあてられている。
 イ 社会保障給付費の財源は,被保険者からの保険料と税金のみでまかなわれている。
 ウ 社会保険には,健康,年金,雇用,火災,介護の5つの部門がある。
 エ 社会福祉は,障害者などハンディキャップをもつ人々を対象とする施策である。

これの答えですが,おそらく「エ」でしょう。
アとウは明らかに間違いですが,イとエの選択肢が微妙です。
イは,国債も財源と考えられるので間違いでしょうが,ただし,国債についても将来の税金で返済すると考えると間違いと言い切れない部分もあります。細かいことをいうと印紙収入なんかも財源と考えられますね。
一方でエについては,「ハンディキャップ」という言葉があいまいでよくわかりません。保育所の設置やひとり親世帯への児童扶養手当の給付などが社会福祉の例ですが,乳幼児とその家庭,ひとり親世帯の方を「ハンディキャップ」をもつ人々と言えるのかどうか判断が難しいところです。
「社会生活を営む上で」ハンディキャップをもつ人々,という表現であれば適切で,エが正しいとなりますが,問題文だとあいまいなように思います

つまり,わからなければきちんと質問する姿勢を生徒が持つことと,その質問に適切に答えられる力のある先生がいなければ,最難関校の入試は難しいということも言えると思います。

それと,疑義問題とは言えないと思っているのですが,
答えがよくわからない入試問題の代表がお茶の水女子大附属高校社会の記述問題です。

2015年
なぜ消費税が社会保障の財源としてふさわしいのか,その理由を説明しなさい。
2016年
開発途上国と先進国との間に経済格差が生じた理由を説明しなさい。

とくに後者が特徴的なのですが,何をどのレベルで書いていいのか判断ができません。
毎年,このような記述が複数出題されます。
いわゆる,「答えのない問い」,「自分の考えを書く問い」です。
現在の入試制度改革の流れを見ても,また,東大でも一橋でも社会の入試は論述で,ある程度の受験生の裁量が認められていることを考えても,時代の流れにあった入試問題ではあると思います。

こういったものも,やはり先生に見てもらって自己採点する必要がでてくるでしょう。
ちなみに,解答を公表してしまうと,このような出題はできなくなる可能性があります。こうした問いに型通りの解答はないからですね。したがって,解答を公表すると,受験生の考えを見るようなタイプの問題は極めて出題しにくくなると思います。今,国立大学の入試では,解答例を示すように文科相が方針を示していますが,同様の理由で,解答公表は避けるべきだと思っています。

本来であれば,経済格差が教育格差につながってはいけないと思っています。ただ,難関校を目指そうとすると,どうしても塾に頼らないと難しい面があり,経済格差が教育格差にもつながるという現実がありますね。
それが,過去問集1つを考えてみてもわかってしまいます。

では。