志学ゼミナール塾長のブログ

札幌市,中島公園近くの学習塾「志学ゼミナール」のブログです。

3倍の努力

こんにちは。

将棋をやっていることが,私自身の人生観や生き方に大きく影響しているなと感じています。
何度か,「にしさんはクリスチャンですか?」と聞かれたことがあります。それも,何の脈絡もなく,唐突にです。
私は特定の宗教を篤く信仰しているわけではありませんので,当然キリスト教徒でもありません。強いて言えば,神仏習合を基本とする日本人的な宗教観(多くの日本人はそれを無宗教と呼んでいます)をもっているというのが私の信仰でしょうか。
それでも,私の生き方,考え方などが,クリスチャンのように見えることがあるのでしょう。大らかで寛容なところがそう見えるのかもしれません。詳しくは書きませんが,将棋をやっていることが,そうした私の人生観の根底にはあると思っています。

将棋を通じてさまざまな方とも出会い,影響も受けてきました。
以前に書いたと思いますが,将棋の師匠のような方から,「子どもは信じてあげないといけない」と言われ,それは今でも私の生き方の指針になっています。
将棋を通じて知り合った別の方の言葉で,次の言葉も常に肝に銘じています。
新井田さんといって,北海道で将棋の普及に尽力された方の言葉です。

「教える者は,教わる者の3倍の努力をしなければならない。」

なかなかに重たい言葉であると思います。
新井田さんは全国大会で優勝されたこともあるアマチュア将棋界の雄でした。
その方が,初心者に対して,ときには王様1枚で対局して将棋を教えているような場合にでも,3倍の努力をすることを心がけていたのです。

塾の授業でも,一通りの理解をしていれば,それなりに教えることはできるでしょう。
ただし,よい授業をしようと思えば,多くの時間を予習などの授業準備に時間を割く必要があります。
私自身も,はじめて担当する講座では,90分の授業に対して,4~5時間は準備に時間をかけていました。私の経験では,優秀な先生方ほど,しっかりと授業準備をされる傾向があるように思います。
さらには,新たな知識を得たり,知識を更新したり,授業の手法を工夫したり,…と,自分自身の技術に磨きをかける必要もあります。それだけではなく,生徒たちの宿題を丁寧にチェックしたり,質問に答えたりと,授業に付随して生徒たちのフォローも必要になります。

それでも,生徒たち全員がグングンとできるようになるかというと,必ずしもそうではありません。
「3倍の努力」という言葉には,うまくいかないときに,原因を生徒たち教わる側に求めるのではなく,自分自身の中に原因を求めて研鑽を積まなければならないという,覚悟や謙虚な姿勢をも含まれているように思います。

昨日,堀口先生の将棋を拝見しましたが,体調を崩される前の先生は非常に謙虚に真摯に将棋に向き合う熱心で尊敬すべき棋士でした。ものすごく努力をされていたのです。昨日は衝撃や悲しみが強かったのですが,前を向いて進んでいこうと考えたとき,改めてこの言葉の意味を考えたのでした。

では。