こんにちは。
以前にこんな記事を書きました。
「過去記事 読書適齢期」
https://shigakuseminar.hatenablog.jp/entry/68991055
青年時代に愛読していた『星々の悲しみ』(宮本輝著)を,30歳を過ぎてから読んでみたものの,不思議なほどつまらなかった経験があります。
読書には,その本に出会うべき適齢期がありますねと,そんなことを書いています。
若い頃のほうが多感であるため,名作にはなるべく若いうちに触れたほうがいいと,そう考えていました。
しかし,先日,そうでもないなと気づかされる出来事がありました。
国語を教えていると,読んだことのある小説が題材として取り上げられていることがあります。宮本輝氏の『蛍川』を目にしました。これもたぶん中学生のときに読んだ作品です。もう一度読んでみようと古本屋さんに寄ってみましたが,これはありませんでした。
並んでいたのが『道頓堀川』です。これも宮本氏の作品で,私は高1のときに読んだと思います。舞台がどのような場所か,道頓堀川とはどんな川なのか,当時は何も知らずに読んだのですが,40歳を過ぎた今はわかります。
えっ,阪神ファンが飛び込むどぶ川,大阪のど真ん中の繁華街が舞台だったのかと,タイトルを見て驚いたため,こちらを買って読んでみました。
ちなみに,10年くらい前に道頓堀川を訪れたときの写真です。
今では,小説に登場するような古い時代の面影はあまり感じられません。
さて,改めて小説を読んだ感想ですが,文体がきれいですし,まさに純文学です。それでいて楽しいのです。宮本氏は稀代の小説家だと再認識しました。
また,高校生のときにはそんなに感動しなかったはずで,印象の薄い作品だったのですが,今回はひどく心を動かされました。
小説にはビリヤードに興じるギャンブラーが登場するのですが,私も将棋に興じた時期が長いです。繁華街が舞台ですが,飲んで遊んだ経験も人並みにはあります。
そんな人生経験によって,若い頃よりもこの小説が心に響いたのでしょう。
思い返せば,中学生のときに読んで,ひどくつまらなかった夏目漱石が,大学生のときに読んだら面白かったとか,そんな経験もあります。歳をとったからこそ理解できるものも少なくはないですね。
ほかの小説も,いくつか読み返してみようかなと考えております。
では。