志学ゼミナール塾長のブログ

札幌市,中島公園近くの学習塾「志学ゼミナール」のブログです。

「うそ」

こんにちは。

以前に,塾の保護者会で,尊敬する社会の先生がこのようにおっしゃいました。
「社会は子どもに教えないでください。とくに,社会が学生時代に得意だった方ほど,教えてはいけません。」と。

社会科の内容は年々新しくなっていきます。
地理や政治・経済の内容だけではなく,歴史も新発見があって学説が変化するのにともなって教科書の内容が刷新されていきます。
親御さんが学生時代に覚えた知識で子どもたちに教えると,「うそ」を教えることになりかねないからですね。

中学社会の場合には,「歴史」,「地理」,「公民」と分野が幅広く,さらにいうと,「歴史」であれば「世界史」と「日本史」,「公民」であれば「政治分野」と「経済分野」と細かく分かれ,カバーすべき分野は膨大になります。全ての変化を追い切るのは極めて困難です。
私も間違いをおかすこともありますし,学校の先生方でも,教科書の変化に気がつかずに,古い知識で教えていらっしゃることが少なくありません。
一例をあげると,いまだに,学校で「公定歩合」を習った(現在でも公定歩合操作が行われているという文脈で教わった)と生徒から聞くことがあります。公定歩合は2006年になくなっていますし,当然,教科書からも消えたわけです。

ちょっとクイズを出してみましょう。変化が少ないと思われがちな?歴史分野に絞ってみます。
次の選択肢の文章について,正しい(教科書に載っているという意味で)ものには「〇」,誤っているものには「×」をつけてください。

ア,894年,菅原道真の献言によって遣唐使が廃止された。
イ,遣唐使が派遣されなくなると,中国文化が日本に流入しなくなり,国風文化が栄える契機となった。
ウ,関ヶ原の戦い以降に徳川家にしたがった大名を外様大名という。
エ,参勤交代は,旅費や江戸滞在費などを大名に負わせ,大名の財力を削ることを目的に行われていた。
オ,江戸時代には,人口の約80%を農民が占めていた。

細かいところがいろいろあり,このまま入試問題に使えるかというと,そうではないですが,
これら5つの文章は,厳密にいうと全部「×」です。
社会の解説ではないので,簡単にだけ説明します。
「ア」…現在では「廃止」ではなく「停止」と書かれています。
「イ」…昔の教科書には書いてあった内容ですが,現在では,遣唐使停止と国風文化の発達は関係がないとされていて,教科書にも因果関係があるような記述は載っていません。
「ウ」…「以降」ではなく「前後」と記述が改まっています。
「エ」…これも以前の教科書に出ていたものが,新資料が発見されて学説が変化し,財力を削る目的はなかったとされています。「将軍への儀礼として」のような書き方をしている教科書があります。
「オ」…現行教科書では,「農民」と「百姓」を区別しています。「農民」ではなく「百姓」とするのが正しいです。

とくに多いのが社会,理科なんかでも変更点があるわけですが,お子様に教えられるときには,教科書に目を通して内容を確認する必要があるということが1つです。

また,一昨年,『応仁の乱』(呉座勇一著・中公新書)がベストセラーになりましたが,読んでみると,学校で教わった「常識」と最新の研究で明らかになった歴史の実像とが大きく異なっていることがわかります。
歴史に興味のある方は,信頼のできる学者の諸先生方が書かれた書籍を手に取ってみると,驚くほど歴史が「変化」していて面白いかもしれません。

では。