こんにちは。
私は将棋が好きなわけですが,昔から,将棋の話をすると,「私も好きですよ」と相槌を打ってくださる方はたくさんいらっしゃいました。
しかし,少し専門的なことを話すと,ルールを知っている,子ども頃に一時期遊んだことがある,という程度で,この方は将棋が好きでも何でもないのだなあと,残念に思うことが数多ありました。
というよりも,そちらのほうが圧倒的に多かったでしょうか。
「専門的」と書きましたが,大げさな内容ではなく,最近の将棋界で話題に上っているプロの先生のことをお話ししてもご存じなかったとか,その程度です。プロ棋士は羽生善治,藤井総太,加藤一二三しか知らないとか,そんなレベルで「将棋が好き」とおっしゃる方がものすごく多かったです。相手に話を合わせようとされているわけですから,悪いことではないですね。
将棋を「打つ」とおっしゃる方も多いです。将棋は「指す」です。「打つ」とおっしゃる時点で,その方の将棋に対する情熱であるとか,棋力であるとか,それが大したものではないことがわかってしまいます。
ただ,こちらとしては,期待外れで残念に思うことは確かです。
あるとき,上司のような方から,唐突に話しかけられたことがありました。
おそらく,お話をしたのはこのときがはじめてだったでしょう。そのような状況で声をかけられたわけですから,私は確実に怒られるのだろうと思い,さらには自分は何か悪いことをしたのだろうかと,懸命に記憶を掘り起こしながら身構えたことを覚えています。
どのようなお話だったかというと,
「にしさんは,将棋がお好きなんですか?」と聞かれ,拍子抜けしてしまいました。
それまで,将棋の話題が出るたびに,何度も残念な経験をくり返してきましたので,こうした場合には,相手との距離感を測りながら会話するようなところがあります。
私は,自分が以前に将棋連盟でアルバイトをしていたことをお話ししたと思います。
すると,お相手の口から大田学さんというお名前が出てきて大変に驚きました。私からすると伝説的なアマチュアの強豪の方です。それで,この方が本当に将棋にお詳しいことがわかりました。
この方も,距離感を測りつつ,大田先生のお名前を出されたのかも知れません。
安易に相手に同調しても,かえって相手を残念な気持ちにさせることも少なくないでしょう。言葉のキャッチボールの難しいところですね。大切なのは,相手の気持ちを推し量る想像力なのかもしれません。
では。