こんにちは。
高尾善希先生という歴史学の先生がいらっしゃいます。囲碁の高尾紳路先生のお兄様でもいらっしゃるのですが,高尾先生がインターネット上で,どんなことでも断言する言説が好まれているようだと,現代の風潮を危惧されていました。
なるほど,そういうところはあるなあと,私も気づかされました。
今の親御さんたちとお話をしていて,結論を急がれる方が多くなったと感じております。もちろん,そうではない方もいらっしゃいますし,この教室にお子さまを預けてくださっている方たちは,落ち着いた聡明な方ばかりで,そうしたことは感じませんが。
結論を急ぐというのは,塾だとこのような感じでしょうか。
以前,小学生の学力テストを受けた親子と面談したことがあります。テストの結果を受けての学習相談と,場合によっては入塾のご案内をするためのものでした。
その親子とはそのときが初対面ですし,ただの1回のテスト結果しか資料はありません。
その面談で,こう聞かれました。
「東大に入れますか?」
まだ小学生なのです。それに私は予言者ではありません。
わかりませんと正直に答えました。
「この塾に入って勉強をがんばれば大丈夫です。」
「塾に入れば合格できますよ。」
そう断言して欲しかったのだと思います。
しかし,ただの一回のテスト結果しか見ていない初対面の小学生に対して,東大に入れますと断言する方がいらしたとしたら,そちらの方がよっぽど信用ならないでしょう。
私が「誠実」に対応したため,結局は,その方が入塾されることはありませんでした。
「子どもは志望校に合格しますか?」
「次のテストで内申点は上がりますか?」
結論を急ぐ質問を受けることもしばしばです。Yesと断言されれば安心できるのかもしれません。
ですが,確実なことはわからないわけですし,現時点での可能性などを客観的にお伝えすることしかできません。8割,9割は大丈夫ですね,と回答したとしても,そのような質問をされるのですから,もやもやは残るはずです。
結論を急ぎ,断言する相手を好んでいると,知らずに信用ならない方を選択していたり,だまされていたり,危ない方に流されていたり,よくない方へと向かっていくのかもしれません。
高尾先生が危惧されていたのも,そうしたことをお考えだからなのでしょう。
では。